江ノ電湘南海岸公園駅を出て、線路沿いを鎌倉方面に向かう。江ノ電の鵠沼駅から江ノ島にかけての一帯は明治以降別荘地として開発されてきた歴史を持つ地域であり、現在も随所に往時の風情が残る。線路沿いに立派な門構えと広い庭を持つ「善乃園」の前を過ぎ、線路を渡ると美味しそうな煙が立ち上る古民家が見えてくる。
「炭焼き ミンナミ食堂」は、大正期に建てられたとされる燃料問屋「薪仙商店」の建屋の一部を活用して営業している。開業時に店舗を探していた際、店主の知人であった「薪仙商店」の建屋を活用させてもらえることになったそうである。2階の窓辺に設けられた手すりはシンプルながらも端部の柱に凹凸の付いた意匠が施されており、橋の欄干のようにも見える。簾の掛かった窓辺も風情を感じる佇まいである。
腰板のついたガラス戸を開け店内に入ると、キッチンカウンターを左手に、向かいのショーケースには串打ちされた焼き鳥が並んでいる。その奥に2階に上がる階段が続く。2階は、階段から続く廊下部分にこそ当時の天井が残っているが、客席は天井が外されており、屋根の小屋組みが見えるようになっている。広々とした部屋の正面に設けられた大きな窓に、細い桟木が一面につくり出す陰影が美しい。正面が江ノ電の線路になっているため、店内からは、時折前を通過していく車両を眺めることもできる。
同店は、サバの文化干しや宮崎県産の日南鶏を使った炭焼き料理の定食、焼き鳥等が人気メニューとのことで、昼食から夕食まで炭焼き料理が味わえる。今回は炭焼きチキン定食を注文した。炭火でじっくり焼き上げた鶏肉に柚子こしょう、ネギポン酢、アンチョビクリームから選んだソースがかかっている。今回はアンチョビクリームとしたが、炭の香りの付いたチキンとアンチョビの風味、クリームの相性が良く、あっという間に完食してしまった。定食とセットになっている小鉢の豆腐も自家製とのことで、店主のこだわりがうかがえる。
江ノ島からも徒歩圏内にある店舗なので、江ノ島散策の際には、是非足を延ばしてみてはいかがだろうか。
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