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[開港5都市]景観まちづくり会議2022新潟大会 - 03 全体会議I - 「時空を超えた五港のキズナ」【THE HERITAGE TIMES YOKOHAMA KANAGAWA】

更新日:2022年11月13日


<開港5都市景観まちづくり会議始まる>


令和4(2022)年9月23日(金・祝)、いよいよ「開港5都市景観まちづくり会議2022新潟大会」が始まった。大会は3日間開催され、初日は全体会議1(開会式・基調講演)、ウェルカムパーティー、2日目は分科会と全体会議2(FG会議=若手中心の参加者によるプレゼン大会)、3日目は全体会議3(分科会報告・閉会式)、それに複数のオプショナルツアーやオプション企画で構成されている。



全体会議1の会場は、来年開業20周年を迎える「朱鷺メッセ(平成15(2003)年5月開業)」である。「朱鷺メッセ」は、コンベンションセンターとホテル・業務施設から構成される複合一体型コンベンション施設で、全体デザインを横浜市新市庁舎の設計を監修した槇総合計画事務所が担当。建造物全体は船をイメージして設計され、ガラスと金属による透明感のある表層部と、水平性と垂直性とを組み合わせたデザインで万代島の景観の核を成している。

会場となっている中会議室には、函館、横浜、神戸、長崎、新潟からの参加者のほか開催都市である新潟市で募集した一般参加者も含めて、約150名が、会場を埋めており、それぞれに挨拶を交わしていた。

会議室のホワイエには各都市の景観まちづくり関する資料などが置かれたブースが並んでおり、開港5都市景観まちづくり会議の恒例となっているTシャツやピンバッチも販売されていた。



<開会式>

定刻となり渡邉秀太氏(新潟市公民連携ゼミ)、手部純氏(表現者アート集団 手部)の司会で始まった。

最初に主催者挨拶として、開港5都市景観まちづくり会議2022新潟大会実行委員会委員長の本間龍夫氏(新潟商人塾)から、「4港と新潟の港は人の交流があった。各都市の視点で見ると、このつながりはどうなっているのか。開港5都市の新たなテーマとして提案していきたい。」「今大会の全体リーフレットのデザインに取り入れられた「ジグソーパズル」は、どこまでも繋がっていくことから、この開港5都市景観まちづくり会議の趣旨に相応しいとして使った」「ジグソーパズルモチーフのピンバッチも作製したので是非購入されたい」とPRで挨拶を締め括った。



続いて、開催都市の基礎自治体である新潟市の中原八一市長からは、「新潟は北前船の寄港地として明治時代から栄え、平成31(2019)年に開港150周年を迎えた。万代橋から眺める新潟の景色は素晴らしい。新潟は他の4港と異なり川湊であり、各所に残る風情が新潟の自慢でもある。今日は古町でも地ビールのイベントも開催されている。」「是非、参加者の皆様にも会議開催の滞在中に、歩いて新潟の自慢である川湊の景観を楽しんでほしい。」と、4都市からの会議参加者らを歓迎した。



<基調講演 「新潟湊の成り立ちとその歴史・風土」>

休憩を挟み、坂井秀弥氏(新潟市歴史博物館館長)による基調講演が始まる。基調講演のタイトルは「新潟湊の成り立ちとその歴史・風土」である。


・新潟の川港の成り立ち

左岸が旧新潟、右岸が旧沼垂地区と信濃川を中心に性格の異なる2地域が合併して新潟市ができている。この両地区をつなぐ橋として最初に架かったのが萬代橋である。西村幸夫氏によると、古町から都心軸ができているそうだ。新潟は歴史がない街だと皆が言うが、決してそうではなく、明治6(1873)年の人口統計では、全国で21番目を誇り、日本海側屈指の港町である。この当時人口が多い街の多くは城下町であった。1600年頃から時代の大きな転換点を迎え、沼垂湊(新潟湊)が整備されている。日本海側に大小の砂丘があり、これに阻まれて水が溜まりやすい地域となっている。これにより、河川の流路が変わりやすく、これまでに沼垂は4度街を移転させている。

新潟は信濃川、沼垂は阿賀野川を起点として、2つの藩に分かれていた。新潟の湊は古新潟町にあったと思われていたが、古文書によると平島と呼ばれる古新潟より1.6㎞ほど内陸側に湊がつくられていたそうである。詳しい資料は見つかっていないが、後に古町付近に湊が造られている。


・都市の近代化と対岸への拡張

近世の町割りを現在の地図に重ねてみると、ピッタリと地割が一致する。発掘調査をすると、生活の痕跡がたくさん出てくる。今の街の下には400年前の人々の生活が遺っている。

内水面が極めて安定しているのが、港町発展の上で重要であった。他の城下町だと武士の時代が終わると、城を役所や学校として活用してきたが、新潟にはそういった土地はない。そこで、信濃川右岸の沼垂地区に萬代橋を架け、ここを税関など近代の街を受け入れる土地として整備していくことになる。明治の終わりから大正にかけて、鉄道も整備され新潟の玄関口としての新潟駅が整備される。新潟をさらに発展させたのは、大正11(1922)年に信濃川上流に整備した大河津分水通水により、河川を安定させた。大正時代以降は沼垂山ノ下に工業地帯ができ、さらに発展していくこととなる。


・まとめ

近世から近代に変遷してきた様々な文化財が遺されている。これを育みながら街を盛り上げていくことが大切である。それは、市民・専門家・行政の三位一体のまちづくりが大切である。


<各都市から事例発表>


続いて、各都市からの事例発表が始まる。

函館の佐々木馨氏(函館景観まちづくり協議会)からは、函館の状況として、「人口減少が進んでおり人口が24万人を切った」「観光客は新型コロナウィルの影響で全体として減少しているが、一部施設では増加の兆しも出ている」「北海道・北東北の縄文遺跡群が世界文化遺産に登録され明るい話題となった」「西部地区再整備事業が株式会社函館西部まちづくRe-Designが発足、元町公園内にある旧北海道庁函館庁舎をリニューアルし8月11日に飲食店としてオープン」などが歴史風土保存会の活動の歴史も交えて報告された。。


佐々木馨氏「ただ守るだけでなくいかに活用していくかが重要ということをあらためて考えさせられた」


横浜からは、まず光田麻乃氏(横浜市都市デザイン室)の横浜の都市デザイン行政50周年を記念して開催された「都市デザイン・横浜」展への各都市のご来場ご協力の御礼の言葉があり、遠藤望氏(yocco株式会社)からは、「横浜市都心臨海部夜間景観形成ガイドラインの策定」、「山手133番館の改修工事の完了」、「横浜・都市デザインの50年を振り返る講演会や市庁舎でのプレ展示、BankARTKAIKOでの展示」などが報告された。


遠藤望氏「これからの都市デザインに向けて、新しい価値観等を見出しながら進めていきたい」


神戸の清水俊博氏(トアロード地区まちづくり協議会)からは、神戸の状況として「JR三ノ宮駅前の屋外広場等の再整備が進んでいる。」、「令和4(2022)年3月には、安藤忠雄氏から神戸市に寄贈されたこども図書館が東遊園地内に竣工した。」、「ウォーターフロントエリアでは、大規模なマンションや商業施設の整備が進んでいる。」と報告があり、合わせて北野地区と旧居留地を結ぶトアロード地区の取組について紹介があった。は、トアロード地区は住宅と職場を行き来する外国人たちに合わせて商業が発展してきた。海側からゆったりとした坂道が北野地区に続き、眺望を楽しみながらゆったりと歩くことができる。」沿道の建築物や屋外広告物の計画がある場合では、事業者と協議会が景観協議を行い、イベント企画や景観への配慮なども担ってもらっている。昨年はコロナ禍であってもできることを探し、トアロードの魅力を伝える紹介動画を多言語にて作成した。


清水俊博氏「トアロード地区は住宅と職場を行き来する外国人たちに合わせて商業が発展してきた。海側からゆったりとした坂道が北野地区に続き、眺望を楽しみながらゆったりと歩くことができる。」


長崎の岩本諭氏(長崎居留地歴史まちづくり協議会 / 斜面地・空き家活用団体つくる)からは、昨年の長崎大会への参加のお礼と本日開業した西九州新幹線の開業に触れ、長崎市景観まちづくり連絡協議会は全9団体の活動について、景観マップや暮らしを伝える冊子、若者による斜面地の農園利用等の活動を行っている。」などの報告があった。

また、「東山手・南山手を中心とした居留地エリアを地域と長崎市が一体となって、協議会を進め、令和3(2021)年3月にグランドデザインを策定している。暮らし、活動・営み、地域資源、地域ブランディングを主要な方策とし、斜面地や廃校の活用などハードだけでなくソフトも取り入れながら地区内をゾーニングすることで計画づくりを行った。」、「台風の影響もあって1日しか開催できなかったが、9月17日に長崎居留地まつりを開催している。地域の高校や大学との連携、会場の分散化なども行なった。長崎タータンの活用としてグラバーの故郷であるスコットランドから寄贈されたデザインをベースにしたグッズ開発が進んでいる。商店街のフラッグにも活用されている。」との報告もあった。


岩本諭氏「函館BAR-GAIを参考にした、長崎居留地BARU-GAIも開催できた。」


新潟の杉山節子氏(歴史都市新潟研究会)からは、「五港学」について提案があった。

「5つの都市が景観・まちづくりを推進していくために互いに交流を深めるための会が開港5都市景観まちづくり会議である。これらの港は自由貿易港として横浜から段階的に整備が進む。このため、前の整備のノウハウを次に活かすことができたことから、5つの港をつなぐ形で活用する人材を多数輩出されている。」、「例えば、前島密は上越市の出身であり、江戸で漢学、函館・長崎で洋楽を学んでいる。函館ではまた、航海学を学び、本州沿岸を周遊。慶応3(1867)年に兵庫奉行所の役人に転出し、兵庫で幕末を迎え、兵庫開港に尽力している。その後、明治2年新政府の官吏となる。」など、「5都市は互いに関わりあって発展してきた歴史を学び、現在に受け継がれてきた歴史資産が次世代に引き継がれるよう尽力していきたい。」との熱いメッセージを寄せた。




<パネルディスカッション>


事例報告に続いて、コーディネーターに上杉知之氏(にいがた花絵プロジェクト実行委員会)を迎えてパネルディスカッションが始まった。

パネリストは、本間海渡氏(新潟市 特定非営利活動法人 新潟海洋開発)、佐々木馨氏(函館市 函館市景観まちづくり協議会代表)、光田麻乃氏(横浜市 横浜市都市デザイン室長)、曹祐二氏(神戸市 南京町景観形成協議会)、梅元健治氏(長崎市 長崎居留地歴史まちづくり協議会)。



上杉氏「開港5都市を繋いでいくものとして、時空を超えた五港のキズナというテーマとした。」








本間氏「潮の干満が少ないのが新潟の特徴である。1番は長崎、2番は横浜と続き、新潟は5港で5番目となり、他の港と比較し、水辺が市民に近いという特徴がある。その中で、特定非営利活動法人 新潟海洋開発では、ビーチスポーツの普及を一つのテーマとしており、ビーチテニス大会の景品として開港5都市の名産品を取り入れたりしている。一方で若手の参加が少なく、今後次の世代に活動を引継いでいく課題を感じている。」


佐々木氏「函館のBARU-GAIが長崎でも行われていると聞き、ありがたく思っている。函館でも五稜郭を世界文化遺産に登録していきたいと思い、年2の講演と5回の講座を実施している。この講座の中で、長崎市職員で世界遺産に尽力された永瀬氏に講演をいただいた。」




梅元氏「神戸はものづくりの街としても発展してきたので、神戸タータンのクオリティやデザインに感心している。歴史を生かした取り組みが長崎には不足していたと自覚し、長崎市役所にあったスコットランドから寄贈されたタータンを活用するに至った。」




曹氏「私は商業や観光を生業としているが、この会議を各都市の市民にどう知ってもらうかが重要だと思っている。前回の開催ではコロナ禍で実現できなかったが、都市からブランド(ファンションや食)を持ち寄り百貨店などで販売する開港5都市フェスタを企画していた。」




光田氏「長崎市の居留地のまちのグランドデザインに感銘を受けた。今までは都心で働き、郊外に住むという価値観だったと思うが、コロナ禍で働き方が変わったこともあり、街も使い方が変わってくる時期に来ていると思う。日常・非日常の境界がなくなってきているようにも感じる。暮らし目線で、どういった空間が必要なのか各都市と議論を深めていければ良いと思っている。横浜市ではパークPFIを活用した公共空間の活用も進めており、今後各都市との連携も深めていきたい。」


パネルディスカッションのテーマは「開港5都市の歴史的なつながりを掘り起こし、そのキズナを活かした未来志向のまちづくり」について、各都市からコメントがあり、最後にコーディネーターが「この全体会議の議論をもとに、各分会の意見交換で議論を深めて欲しい」と締めくくり、パネルディスカッションを終えた。



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