鎌倉市材木座海岸から程近い水道路には、新田義貞縁の古刹「九品寺」をはじめ、多くの寺社が軒を連ねる。その一画に、凛と佇む古民家がある。古民家は、関東大震災直後の大正14(1925)年に宮大工により建てられたそうだ。その後店舗利用等も経て、長く空き家になっていた建屋を改装し、平成23(2011)年にゲストハウス「亀時間」がオープンした。店名には、鎌倉で暮らすように、のんびりした時の流れに身をゆだねて欲しいとの想いが込めらている。今回の歴飯は、ゲストハウスのラウンジで毎月第1、3土曜日の夜にオープンしている「Yorukame feat. meCURRY」を訪ねた。
改めて建物を見ていく。平屋だが重たい瓦屋根をしっかりと支えるため、桁(屋根等上部を支えるための材)が外壁に突出させた構造となっている。関東大震災の経験があったからなのか、敷地は約1m程度高く上がっており、煉瓦の階段を3段上がって玄関に至る。玄関脇は小さな前庭となっており、板塀から庇にかけて絡まる蔦が緑のカーテンを作っている。玄関を入ると右手が客室、正面にカウンターとキッチン、手前にラウンジが設けられている。2段ほど床レベルを下げた客席は、客室利用者と店内奥への動線を緩やかに切り分け、どこか中心性も持った劇場的な空間にもなっている。茶系の床タイルと古民家の黒ずんだ柱や梁が素敵な組合せだ。
「Yorukame feat. meCURRY」では、南インドのカレーをテーマにベジミールス(ベジタリアンの方)、ノンベジミールス(ベジタリアンでない方)、合盛りの3種の定食を提供している。今回はノンベジミールスと鎌倉界隈で人気のクラフトビール「ヨロッコビール」を注文した。バターチキン等コクのある濃厚な北インドカレーに対し、南インドカレーは水分が多く、辛味を効かせたスパイシーなカレーが特徴だそうだ。今回のプレートは、チキンを使ったカレーの他、3種類のカレーとサラダが盛られていた。これらのカレーを好みに合わせ、バスマティ米と呼ばれるご飯にかけて食べていく。3種類のカレーはどれもスパイシーだが、チャナ・ロスと呼ばれる豆のカレーを合わせると、豆のコクが辛味を抑え、心地好い気分にさせてくれる。ヨロッコビールの柑橘類の風味もカレーと相性が良く、スパイスで火照った身体を適度に冷ましてくれた。
鎌倉のまちと歴史ある古民家がつくる、ゆったりと流れる時の中で、スパイスの香りに浸ってみてはいかがだろうか。
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