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heritagetimes

[歴飯_144]柳屋ベーカリー



JR小田原駅から国道1号線に出て、箱根方面に向かう。ういろう本店を過ぎ、足柄街道との交差点の少し先に、うす皮アンパンと書かれたのぼりが見えてくる。今回の歴飯で紹介する「柳屋ベーカリー」は、大正10(1921)年創業の老舗パン屋である。同店の看板メニューと言えば、のぼりに書かれた「うす皮あんぱん」である。餡は、つぶ餡、こし餡の他、ずんだ、黒豆、栗、桜など種類が豊富で、生地はかなり薄い。口いっぱいに広がる餡子の風味は、まるで和菓子を食べているかのようだが、しっとりとした生地の旨みも感じることのできる逸品である。「うす皮あんぱん」は、創業100年を超える同店の歴史の中では歴史が浅く、平成4(1992)年に開発された商品とのことだが、それでも数十年に渡り看板商品というのも頷ける美味しさだった。



ここで、同店の店舗を紹介したい。創業時は、もう少し箱根寄りに店を構えていたが、関東大震災後に現在の位置に既に建っていた町家に移転してきたとのことである。国道1号線と奥の通りに面する街道筋の細長い敷地に、平屋の店舗、パンを焼く工房が続いている。出桁造り押縁下見板張り、一部漆喰塗の外観にややむくりの付いた屋根が乗っている。伝統町家の外観に対し、店内に入ると、天井と壁の取り合い部分に蛇腹(凹凸の付いた装飾)が付き、隅をややカーブさせた造りは洋風となっている。話を聞くと、かつてはシャンデリアも下がっていたそうで、和洋折衷の造りであったことが窺える。



「あんぱん」は欧米の食文化であった「パン」に日本人に馴染みのあった伝統食の「餡子」を組み合わせて誕生した和洋折衷のパンである。歴史ある和洋折衷の店舗で、和洋折衷の「あんぱん」の歴史を感じながら、「うす皮あんぱん」を味わってみるのも素敵な体験ができるのではないだろうか。




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