<開港5都市景観まちづくり会議始まる>
令和5(2023)年9月9日(土)、いよいよ「開港5都市景観まちづくり会議2023函館大会」が始まった。大会は3日間開催され、初日は全体会議1(開会式・基調講演・トークセッション)、ウェルカムパーティー、2日目は分科会と全体会議2(グループディスカッション)、3日目はFG(FG=次世代)会議、全体会議3(分科会報告・閉会式)、それに複数のオプショナルツアーやオプション企画で構成されている。
全体会議1の会場は、昭和45(1970)年に市民から1億円以上の寄付などを原資として官民一体で建設された函館市民の文化活動の拠点として活用されている「函館市民会館」。
会場となっている小ホール前では揃いのTシャツを着た実行委員会のメンバーが受付を行なっている。また、開港5都市景観まちづくり会議の恒例となっているTシャツなどのグッズも販売されていた。また、配布資料の中にはプログラムの他に、この大会に合わせて作られた開港5都市の開港期の図版の絵葉書も入っていた。
ホールの中は横浜、神戸、長崎、新潟からの参加者のほか開催都市である函館市で募集した一般参加者も含めて、約200名が集まりそれぞれに挨拶を交わしていた。会場後方には各都市の景観まちづくり関する資料などが置かれたコーナーが並んでいる。
<開会式>
定刻となり小山直子氏(開港5都市景観まちづくり会議2023函館大会実行委員会委員)の司会で開会した。
最初に主催者挨拶として佐々木馨氏(2023函館大会実行委員会委員長)から「函館でまちづくりに関わっているメンバーの総力を結集して準備した」「テーマの通り対話によって未来をデザインする準備はできたのと思う。」との挨拶があった。
続いて、開催都市である函館市の大泉潤市長は、旧北海道庁函館支庁舎の活用など近年の函館のまちづくりについていくつかの事例をあげ、「まちづくりは行政というよりも市民活動・草の根の運動が力となっている」「函館市の歩みは五稜郭の歩みと重なることから、世界遺産を公約に掲げた。決して平坦な道ではないので、皆様とも研鑽を重ねて目指していきたい」「8つの分科会などを通じて函館の魅力を堪能していただきたい」と挨拶し、4都市からの会議参加者らを歓迎した。
<基調講演 『五港「開港」:開港地函館にもたらしたもの、外国人との交流の中なら生まれたもの』>
続いて、倉田有佳氏(ロシア極東連邦総合大学函館校教授)による基調講演が始まる。基調講演のタイトルは『五港「開港」:開港地函館にもたらしたもの、外国人との交流の中から生まれたもの』である。
まず、開港5都市の共通項と違う部分を探るため、パンに着目して調べ、横浜は「近代日本パン発祥の地」であったり、神戸が「日本有数のパンの消費地」であることなど、各都市のパンにまつわる歴史とエピソードが紹介された。調査の中で新潟市歴史博物館や横浜開港資料館の学芸員によるサポートに触れ、「今の時代はインターネットで情報が入りやすいが、良質で正確な情報はかえって入りにくくなっているのではないか」との感想に加え、第9回外国人居留地研究会全国大会(函館)で、神戸の人から「昭和の神戸。路地が狭く(白系)ロシア人がピロシキをまとめて焼くと、近所に配った。神戸の人たちにとってピロシキは店で買うものではなく、いただくもの」というエピソードを聞いたことなどから、開港5都市が集まる意義について触れた。最後に函館市中央図書館の姉妹都市コーナーに「開港5都市コーナーをつくると良いのでは」という提案で締め括った。
<トークセッション>
休憩を挟んで、各都市の代表によるトークセッションが始まる。
登壇者はコーディネーターの岡田暁氏(2023函館大会実行委員会副委員長)、横浜・国吉直行氏(横浜関内まちづくり振興会顧問)、神戸・佐田野宏之氏(神戸市景観形成市民団体連絡協議会会長)、長崎・大滝悠依氏(長崎都市・景観研究所)、新潟・上杉知之氏(新潟都市景観ネットワーク(にいがたチューリップ部)副会長)。
トークセッションでは、「開港5都市景観まちづくり会議が始まった頃の様子」の話から、「近年各都市が待ちづくり力を入れていること」、「これからの開港5都市に期待すること」などについて話し合われた。
・横浜・国吉直行氏(横浜関内まちづくり振興会顧問)
「開港5都市景観まちづくり会議が始まった当初は各都市の街自慢だった」
「回を重ねる中で各都市の個性もありハード中心のまちづくりの話から食文化や観光などのソフトの話も増えてきた」
・神戸・佐田野宏之氏(神戸市景観形成市民団体連絡協議会会長)
「三ノ宮駅周辺のまちづくりや市庁舎の建て替えが進んでいるが、タワーマンションの規制などが気になっている」
「開港5都市は神戸が言い出しっぺ。開港5都市の中で話しあわれたことを地元に持ち帰って行かせると良い」
・長崎・大滝悠依氏(長崎都市・景観研究所)
「新幹線の開業に合わせて再開発まちづくりが進んでいる。」
「函館を参考にしたバル街や横浜を参考にしたオープンウェディングなど開港5都市の連携により生まれた企画もある」
「景観やまちづくりは物語のように長い時間をかけて進められるもの。景観まちづくり会議はそうした物語を伝承する場として続けて行きたい。」
・新潟・上杉知之氏(新潟都市景観ネットワーク(にいがたチューリップ部)副会長)
「新潟駅から古町までの2キロに力を入れてまちづくりが進められている」
「前々回の長崎大会でFG会議ができた時から良い動きになっていると思っている。中間管理職世代としてうまく繋げていきたい」
「「開港5都市は増えも減りもしない。今後、第二の開国に向けて日本を引っ張る存在になっていきたい」
最後に神戸から始まったタータンに関する取り組みなど、各都市が知見を共有して取り組んでいく内容を充実させていくことを確認しトークセッションを終えた。
<アトラクション>
アトラクションとして市民創作函館野外劇の特別公演が披露された。
公演に先立ち、里見泰彦(NPO法人市民創作「函館野外劇」の会副理事長)氏から野外劇の映像を交えて紹介があった。
函館野外劇は宣教師フィリップ・グロード神父の提唱を受けて商店街関係者をはじめとした市民有志がフランスのル・ピディフ野外劇を視察して刺激を受け、2年後の昭和63(1988)年夏に初演を迎えた歴史ある野外劇である。
国の特別遺跡「五稜郭」を舞台に、ダイナミックな函館地方の歴史を題材とし、多数の市民ボランティアが参加する国内最大規模の市民創作野外劇に成長し、数々の受賞とともに「歴史とロマンの街・函館」にふさわしい地域文化活動と新しい観光資源として全国的にも高く評価されている。
いよいよ公演が始まり、縄文時代からの函館の歴史をなぞってテンポよく場面が転換されながら劇が進んでいく。最後はペンライトで客席も参加しながら大団円となり、大きな拍手に包まれて終演を迎えた。
これから3日間、この会議を通じて多くの知見の集積と交流が生まれることが期待される。
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