令和5(2023)年9月11日(月)、「開港5都市景観まちづくり会議2023横浜大会」3日目、函館大会最後のプログラムである全体会議Ⅲは函館市地域交流まちづくりセンターにて、山本慎也氏(元町倶楽部)の司会進行ではじまった。
函館市地域交流まちづくりセンターは、大正12(1923)年、丸井今井呉服店函館支店(設計:佐藤吉三郎・木田保造 / 施工:木田保造(木田組))として建築され、店舗移転後の昭和45(1970)年から平成14(2002)年までは、函館市役所末広町分庁舎として使用された函館市形成指定建築物。平成17(2005)年から平成19(2007)年の保全改修が行われ平成19(2007)年から西部地区の賑いと潤いを創出するため現在の「地域交流まちづくりセンター」となった。
分科会報告
今年の分科会ではまち歩きと合わせて必ず対話テーマが設定されており、5都市間での対話の時間がもうけられていた。
<第1分科会 - 函館王道めぐりと新島襄の足跡>
・発表者:武田敦子氏(函館観光ボランティア・愛)
観光ボラティアガイドの案内で函館の主要観光エリアである西部地区を歩き、歴史的建進物や新島霞の足跡をめぐった。
・対話テーマ:観光ボランティアガイドの今後
「観光ガイドはその街の道案内としての役割が大切。その際、ストーリー性のある内容を意識すべき。」「これからの観光は、体験を通して、その土地の暮らしや産業、地域の魅力を知る内容がよい。」「持続性を考慮して観光ガイドと一緒にまち歩きをすると優先特典があるなど、ビジネス化を検討してもいいのではないか。」などの意見があった。
<第2分科会 - 古地図・古写真でめぐる開港後の歴史~箱館から函館へ~>
・発表者:仙石智義氏(NPO法人函館市青年サークル協議会)
「古地図・古写真」を活用しつつ、幕末から昭和初期までの函館の歴史を堪能した。
・対話テーマ:歴史資料の活用方法/観光ガイドのやり方や課題
長崎さるくを事例として「まち歩きは『市民の街へのマインド』を育てるツールになる。」「資料を活用して制作したものを『作ってお終い』ではなく、どのように利活用するかを考えるべき。」「『歴史』と『食』をつなげて新たなコンテンツ開発が必要。」「歴史資料を多くの人の目に離れられるような拠点作りを目指すべき。」、函館市の具体事例として「中華会館の館内デジタル化のためにクラウドファンディングでの資金調達すべき。」などの意見があった。
<第3分科会 - DeepWest :発見を共有するフィールドワーク>
・発表者:安井重哉氏(公立はこだて未来大学)
西部地区の奥地 (Deep West)で、ポイントをめぐりながらまちを観察した。『まち暮らし』の種を見つけるため、2チームに分かれてフィールドワークを行い、そこで得た気づきを各チームごとにプレゼンした。
・対話テーマ:ボトムアップ的発見共有手法 / 学生間交流
Deep West の生活者の実践する様々な活動について、参加者から今後の発展について期待する声がきかれた。
<第4分科会 - 建築・土木の専門家目線でめぐる~歴史的な建造物活用事例ツアー~>
・発表者 :小川聡氏(ー般社団法人 北海道建築士会函館支部)
歴史的建造物の改修や利活用事例のほか、まちを支えるインフラを見学し、函館の建築 .土木の歴史をめぐった。
・対話テーマ:歴史的建造物の利活用方法
「古い建物を利活用していくには市民や行政の理解が必要。」「事業的に成り立たず廃業する時に建物が維持できないとオーナーが批判の予先になる場合がある。」「なんとか利活用しようと言うオーナーの気持ちを理解して行政も財政面や規制緩和の応援をしないと歴史的建理物は残せない。」などの意見があった。
<第5分科会 - 文化財と生きる歴史と生きる-世界遺産に向けての助走>
・発表者:加藤政代氏(函館観光ポランティアガイド縁ジョイ倶楽部)
観光客と市民生活との分断的状況などの課題を体感しつつ、その解決策を考えながら五稜郭を世界遺産にするための道標を探った。
・テーマ:文化財と生きる・歴史と生きるとは
市民生活と文化財行政は近づきつつあることを共有した。まちづくりにおける担い手や当事者人口を増やすことの大切さや、個々の価値観の違いを認めながらも同じ目的に向かう難しさも提示された。女子高生も参加しており、多世代の参加で5都市に相乗効果をもたらしたい、という力強い意見が発表された。
<第6分科会 - JOMONよ時空を超えて"多様性社会を生き抜くために">
・発表者:山田かおり氏(縄文DOHNANブロジェクト)
世界的には"貴重な"地元にとっては'日常な"世界文化遺産 「縄文遺跡」とその周辺地域をめぐった。
・対話テーマ:世界遺産と共生していく地域の関わり
「縄文は、函館に住んでいても行く機会が少ないが、実際に行ってみると楽しかった。」「『世界遺産の縄文をテーマにしたまちづくり』も成立することを知った。」などの意見があった。
<第7分科会 - 函館の自然と新たな名物 「ブリ」を満喫~函館山&函館公園散策~>
・発表者:松本友香里氏(はこにわ)
函館のシンボルでもある函館山と函館公園をのんびり散策し、近年漁獲量が増えているブリに舌鼓を打った。
・対話テーマ:魚種転換の事例や対応策 / 新たな観光コンテンツの可能性
「新潟ではブリが獲れなくなってきて、代わりに本マグロがここ2、3年でレジャーで釣れるようになった。」という新潟での魚種転換事例が紹介された。また、「新たな観光コンテンツの可能性として、生活圏の中にある魅力ある裏〇〇や、まちの垣根を超えた国宝とのコラボ商品開発が必要」などの意見が出た。
<第8分科会 - アニメなどサブカルコンテンツの聖地巡礼体験>
・発表者:川崎 啓太氏(一般社団法人 はこだて地方創生研究会)
「ゴールデンカムイ」や「ラブライブ!サンシャイン!!」などの函館を舞台にしたアニメや漫画の聖地をめぐった。
・対話テーマ:サブカルコンテンツの観光資源化と発展
「聖地巡礼地において、ファン同士をつなげる「おもてなし」と優しいまちづくりを意識する。」「サブカルで収益化するためには行政・企業・市民活動家等が互いに情報共有する必要がある。」「作品の受け皿としての聖地とは別に、作品の製作環境を整備・誘致することで、新たな聖地の形を模索できるのではないか。」「ロケ地巡りと聖地巡礼の違いは何なのか」「作品と市民がどう関わっていくかが重要」などの意見があった。
大会開催中は函館で「ゴールデンカムイ展」が開催されており、路面電車のラッピングに開港5都市関係者も関わったことなど、分科会ならではのオフレコ話で盛り上がった。
全体会議Ⅱ 『FGプレゼンツ 持続可能な景観まちづくりとは?~開港5都市の未来を考えよう~』報告
・日 時:令和5(2023)年9月10日(日) 午後4時から午後5時30分
・会 場:旧函館区公会堂 2階大広間
・参加者数:73名
・発 表 者 :飯尾遼太氏(FG部会)
・参 考:全体会議Ⅱ(準備中)
オブショナル企画4 (FG企画) FGトーク ~幻の第9分科会~報告
・日 時:令和5(2023)年9月10日(日) 午後9時から深夜0時
・会 場:Pres de La Mer(プレデラメール)
・参加者数:49名
・発 表 者 :中村拓也氏(Code for Hakodate)
・参 考:FG企画(準備中)
FG会議報告
・日 時:令和5(2023)年9月11日(月) 午前9時から10時
・会 場:Pres de laMer(プレデラメール)
・参加者数:30名
・発 表 者 :中村拓也氏(Code for Hakodate)
『5部市FGの今後の1年について考える?』をテーマに、4名程度のグループに分かれて今後1年のFGの行動計画案のアイディアを出しあった。
希望者には開講5都市ロゴ入りのオリジナルの旗を付けた「開港5都市丼」(海鮮丼)がふるまわれた。
「函館大会では全体会議Ⅱの議論が有意義だったので、次回横浜大会でも議論の場をしっかり作りたい。」「忘年会等に合わせた開港5都市間でのオンライン交流会」や「大開港5都市展」といった物産展を開催したい。」、「神戸チームのOSSANZ - オッサンズ - を各都市に発展させる『オッサンズラリー』など外への発信を強化していきたい」といった提案があった。
代表者会議報告
・発 表 者:種崎俊氏(函館市都市建設部まちづくり景観課)
「大会宣言の採択と次回開催都市の決定を行い、来年度の開催都市は横浜市に決定した。」
大会宣言
・発表者:渡邊政久氏(函館大会副実行委員長・函館市公統的建造物群保存会)
開港5都市景観まちづくり会議2023函館大会 大会宣言
北海道唯一の開港港として異文化を取り入れながら発展を遂げた、ここ函館において「原点・いま・そして、その先へ~5都市の対話による未来のデザイン~」をテーマに、開港5都市景観まちづくり会議2023函館大会が開催された。
大会プログラムの検討にあたっては、景観まちづくり会議を開催する意味、開催地に5都市が集う意味を改めて問い直した結果、3日間の大会を通じて"対話"をベースコンセプトに設定し、当日は、異なる考えを互いに尊重し合い、未来志向の熱い議論が行われた。
また、全体会議Ⅱでは、次世代を担う各都市のFuture Generationが連携して企画に取り組み、持続可能な景観まちづくり会議の実現にむけ、めざすべき目標を設定したほか、そのFGでは、オプショナル企画で朝まで夜通しで熱く語り合い、今後、5都市のFGが緊密に連携を図り、継続的に取り組む具体的な方針を定めるなど、これまでの枠組みに縛られない、新たな企画にも挑戦した。
異なる考えを受け入れ、新たなことに挑戦するというマインドは、開港という荒波に揉まれながらも、歴史を紡いできた、5都市市民に脈々と受け継がれているDNAであろう。
「安政の開港5港」という枠組みは、今後増えも減りもしない唯一無二のものであり、相互に影響を与えなから、新たな牙が生まれ始めている。この先、10年後、50年後も5港が強くつながり、レジェンド、FG、行政など、様々な人たちが混ざり合い、動きつづけていくことを約束し、ここに宣言する。
2023年9月11日
開港5都市景観まちづくり会議2023函館大会 参加者一同
次回開催都市あいさつ
・宮川眞壽美氏(横浜の文化を愛する会)
「開港5都市の活動を生きがいにしている。函館大会が盛り上がったので、次回横浜大会もしっかり開催したい。」
・鈴木淳氏(横浜市都市整備局都市デザイン室担当係長)
「実行委員会もまだ未結成、日程もまだ未定だが、10~11月を予定している。ぜひ横浜大会にも皆さんに足を運んでいただきたい。」
大会旗引継ぎ
開催都市である函館市の佐々木馨氏(開港5都市景観まちづくり会議2023函館大会実行委員長)より、次回開催都市となる横浜市の宮川眞壽美氏、国吉直行氏、鈴木淳氏へ大会旗の引継が行なわれた。
主催者謝辞
・佐々木馨氏(開港5都市景観まちづくり会議2023函館大会実行委員長)
「全体会議Ⅰで観ていただいた市民劇をこれからも大切にしていきたい。今後も継承と発展を続けられる大会にしていきましょう。」という力強い言葉に会場からは盛大な拍手が上がり、今大会は閉会した。
※写真提供:景観まちづくり会議2023函館大会実行委員会
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