令和6(2024)年1月20日(土)に(公財)横浜市建築保全公社の主催で横浜市指定有形文化財「旧柳下邸」の修繕工事市民見学会が開催された。
「旧柳下邸」は明治~大正期に銅鉄取引商を営んだ柳下家の邸宅として、大正8(1919)年頃に海の見える根岸の高台に建設された。建物は東館、西館、蔵、洋館から構成されているが、当初は蔵と接客用の東館、居室のある西館(後に一部増築)のみであった。関東大震災後に洋館や表玄関等が増築され、和洋折衷の姿となった。2階建ての洋館の屋根にはフランス瓦や銅製の棟飾りが付き、周辺からも際立っている。
平成8(1996)年に横浜市が土地を取得し、所有者から建物の寄付を受け、修繕工事を経て一般公開されている。
講師の「旧柳下邸修繕工事」の設計監理を担当する(株)ユー・エス・シーの兼弘氏、施工を担当する(株)トージ建築の遠藤氏の解説で、内部外部それぞれの施工場所を見学した。
前回の大規模改修から約20年が経過した「旧柳下邸」では、できるだけ元の部材を残しながらも、戸袋や庇、外壁の下見板張りの腐食した部材の交換作業が進められている。この際交換した木材の幅を将来元の部材に馴染んでいくことを想定し、やや大きめにしている。洋館部分の窓は雨の吹き込みが懸念となっていたため、窓廻りを一段高くし、吹き込み対策を講じたなど、設計や施工の工夫や苦労等が紹介された。また、洋館部分と和館部分の壁の構造の違い等、修繕工事の現場だからこそ見学できる部分も紹介された。
歴史的建造物を維持管理していくには、定期的なメンテナンスが必要である。こうした現場見学会に参加すると、当時の職人の技能の高さや新しい建築様式にどのように向き合ってきたか、その苦労や工夫を感じると共に、その技術を継承していく難しさにも直面する。こうした見学会を通して、少しでも歴史的建造物に関心を持つファンが増え、一棟でも多くの歴史的建造物が後世に引き継がれ、その修繕現場を介して技術が継承されていくことに期待したい。
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