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heritagetimes

[歴飯_175]古民家Cafe×Beer 花やしき

更新日:10月19日



横浜市の郊外部に位置する瀬谷区は、かつて鎌倉郡北部に位置する瀬谷村だった。昭和14(1939)年に横浜市に編入されたが、桑都と呼ばれた生糸の中継地八王子への街道筋の村であったことから、横浜の街の発展を長らく支えた養蚕・製糸の歴史が色濃く残る地域である。中屋敷地区には養蚕農家への融資を行った瀬谷銀行(後に横浜銀行へと引継がれる)の門柱が、本郷地区にある日枝神社には養蚕組合が寄進した「護蚕祠(ごさんし)」が遺っている。


瀬谷銀行跡(門柱)


今回の歴飯で紹介する「古民家Cafe×Beer 花やしき」は、鎌倉郡瀬谷村であった時代の農家の屋敷を活用して令和6(2024)年5月にオープンした。相鉄線瀬谷駅からバスに乗り、竹村町のバス停で降りる。尾根伝いの街道筋から緩やかな坂道を下ると、右手に朱傘が見えてくる。屋敷は丘陵の端に位置し、丘陵の緑を背に川筋の低地に田畑が続いていたであろう、農村の現風景を今に留めている。



庭の緑に誘われて邸内に入ると、左手に蔵と池、右手奥に母屋の入り口が見えてくる。母屋は明治期のものだそうで150年以上の歴史がある。立派な玄関をくぐると、右手に応接室として使われていただろう個室、左手廊下伝いに窓側と16畳の座敷に座席が、突き当りに注文カウンターが位置する。



カウンターで注文を済ませ、庭の池が眺められる窓側の席に着く。昼時に訪ねたということもあり、店内は賑わっていた。食事はおにぎりかサンドイッチがメインだったので、今回は3種の具材が選べる「おむすびセット」(梅おかか、たらこ、海苔の佃煮)を注文した。お米は京都丹後産と産地にも拘っており、柔らかく握られているため、口当たりも良く美味しい。味噌汁の具材は瀬谷産の野菜を使っており、今回は香りのよい茄子と茗荷だった。せっかく店名にBeerとあるので、地ビールも注文してみたくなる。地ビールは瀬谷の土地とも所縁のある鎌倉と相模から選択できたので、今回は鎌倉ビール月を注文した。涼しげな庭の木々や池で泳ぐ鯉を眺めながら味わうビールは格別なものがある。



店内に飾られていた糸取り用の糸巻器が気になり、店主に訊ねた。かつては養蚕もやっていたそうで、カフェとして活用していない部分にもその名残が遺っているとのこと。この一帯は緑や畑も多いので、養蚕の歴史を辿りながら散策してみるのもおススメである。是非、横浜郊外部の歴史文化と農村風景を味わいに、「古民家Cafe×Beer 花やしき」を訪ねてみてはいかがだろうか。なお、不定休のため来店の際は営業日、営業時間を事前に確認して欲しい。




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