開港5都市景観まちづくり会議始まる
令和6(2024)年11月23日(土)、いよいよ「開港5都市景観まちづくり会議2024横浜大会」が始まった。大会は3日間開催され、初日は全体会議1(開会式・基調講演・パネルディスカッション)、ウェルカムパーティー、FG(FG=次世代)ショートプレゼン大会、2日目は分科会とディナー&クルーズのオプショナル企画、3日目は行政会議、代表者会議、全体会議3(分科会報告・閉会式)で構成されている。
全体会議1の会場は、横浜市開港記念会館の講堂。
横浜市開港記念会館は、横浜開港50周年を記念し、市民の寄付金により大正6(1917)年7月1日に開館した。国重要文化財で、神奈川県庁本庁舎(国重要文化財・キング)・横浜税関本関(横浜市認定歴史的建造物・クイーン)と共に横浜三塔に数えられジャックの愛称で市民に親しまれている。令和3(2021)年から改修工事を行い、今年の4月から利用が再開されたばかりである。
会場となっている講堂前には「ペリー提督」のスタチューが置かれ、多くの参加者が記念写真を撮っており、時折動いて驚かせていた。受付では今大会のメインビジュアルがあしらわれたトートバックと一緒にプログラムが配付され、行動内に案内された。
講堂の中では、各都市の開港5都市グッズなどが販売された。
講堂の中は神戸、長崎、新潟、函館からの参加者のほか開催都市である横浜市で募集した一般参加者も含めて、多くの参加者が会場を埋めていた。
開会式
定刻となり船本由佳氏(ヘリテイジタイムズ横浜・神奈川)の司会で開会した。
最初に主催者を代表して山本博士氏(開港5都市景観まちづくり会議横浜大会実行委員会委員長)から「まちづくりに縁がなかった方にも興味を持っていただけるプログラムとなっている」「今日は自分自身も『あぶ刑事』ファンとしてどんなお話が聞けるのか楽しみ」「大会を通じて、熱心に議論が交わされ、交流が深まり、実りのある大会となることを祈念する」と挨拶した。
続いて、開催都市の山中竹春市長を代理して鈴木和宏氏(横浜市都市整備局長)が登壇し「平成5年、神戸から始まった開港5都市景観まちづくり会議も30周年。皆様おめでとうございます。」「前回、皆様をお迎えしてから5年が経過し、横浜駅周辺を中心に大きく街も変化した。」「活発な意見交換による新しい発見や、次の世代に受け継がれるような新しい芽が生まれ、未来へ橋が架かることを期待している。」と挨拶し、会議参加者らを歓迎した。
基調講演 『あぶない刑事からみる横浜の都市景観』
続いて、映画「帰ってきた あぶない刑事」プロデューサーの近藤正岳氏による基調講演が始まる。基調講演のタイトルは『あぶない刑事からみる横浜の都市景観』である。
会場に『帰ってきた あぶない刑事』のオープニングが流れる中で近藤氏が登壇し、一気に会場の期待感が高まった。
近藤氏は昭和58(1983)年、大学卒業後、東映株式会社に入社。 映画『ビー・バップ・ハイスクール』『あぶない刑事』などの製作宣伝を担当。平成8(1996)年からは企画製作部プロデューサーとして、『あぶない刑事 フォーエヴァー』はじめ、『スペーストラベラーズ』『69sixty-nine』『僕たちは世界を変えることができない』『苦役列車』『さらば あぶない刑事』『終わった人』等、数々の作品を世に送り出し、現在はフリーランスとして活躍。 最新作は『帰ってきた あぶない刑事』である。
(参考写真)
まず、『あぶない刑事」は横浜を舞台にしているが、神戸は『帰ってきた あぶない刑事』で、長崎はTVドラマ「あぶない刑事」や劇場版第1作で横浜港に見立てて大島の造船所を、新潟は『あぶない刑事』ではないが他の映画で「新潟地下街西堀ローサ」を新宿の地下街に見立てて撮影。函館はTVドラマ『もっとあぶない刑事』で11話「結婚」でロケ地として撮影しており、するなど、開港5都市の各都市とも縁があることが紹介された。
みなとみらい地区の空撮の比較では、「あぶない刑事リターンズの時にはあまり建物が建っていなかったが「さらばあぶない刑事」の時にはだいぶ建っていることがわかる。映画にはこうした街の歴史を記録する機能もある」と紹介した。
(参考写真)野毛都橋商店街ビル
なぜ、「あぶない刑事」の制作会社「セントラルアーツ」は横浜で撮影することが多かったのかについて、「撮影所がある調布から横浜が近かったということが大きな要因であった。」としながら、やはり横浜には「海」「港」「夜景」「川」「橋」「プロムナード」「坂」「歴史的建造物」などさまざまな魅力が詰まっており「映画で画になる場所が多いことももちろん重要であった。」とし、『あぶない刑事』の代表的なシーンが紹介された。
また、縦の構図を意識したTV版と横の構図を意識した劇場版の演出の違いなども紹介しながら「横浜は海に向けては水平方向、陸側では坂を中心とした縦構造を持っている。」とし、「そういう視点でもう一度映像を見てみるのも良いのでは」と語った。
(参考写真)横浜赤レンガ倉庫
歴史的建造物のシーンの中では、TVシリーズのエンディングで横浜赤レンガ倉庫の前で走るシーンを取り上げ「赤レンガ倉庫が有名になった一つの要因であり、保存に一役買ったのではないか」とし、他にも「ベーリックホール」での銃撃戦や「保土ケ谷カトリック教会」「ホテルニューグランド」「横浜海岸教会」「霞橋」「長者橋」「THE BAYS」にまつわるエピソードも紹介された。また、「横浜は歴史的建造物が街中に点在し、新旧のコントラストが一つのシーンで映し出せるのも魅力」、「歴史的建造物を一望できる視点場も重要」とした。
(参考写真)THE BAYS(旧日本綿花横浜支店事務所棟)
最後は「港街の魅力と今後のまちへの期待」として「映画制作者としてバーチャルの世界が広がる現代においても、「制作者としては、できれば実写で撮りたい。ぜひご協力をお願いしたい。」と締め括った。
その後の質疑応答では、参加者の「景観まちづくりは、気づいていない景観に気づいてもらうことと考えるが、どうしたら良いか」との質問に「歴史的建造物を保存だけでなく、映像などで活用して若い人にも見てもらうということが重要なのでは」と、また「インターネットのない時代、どうやってロケ地を探したのか」との質問には「長いロケハンの経験の中で脚で稼いだだと思う。」と答えた。「『帰ってきたあぶない刑事』ではおしゃれな事務所だったけれども、今後は」との質問に「館ひろしさんはインペリアルビルみたいな雰囲気が良いと言っていた。」と答えた。
映画制作者の視点から港町の景観をどう捉え、その魅力をより高めていくためにどのようにすべきなのか、示唆に富んだ、有意義な基調講演であった。
(参考写真)インペリアルビル
パネルディスカッション「都市景観を形成する歴史文化としみんのタッチポイントづくり」
休憩を挟んで、各都市の代表によるトークセッションが始まる。テーマは「都市景観を形成する歴史文化とタッチポインづくり」。
登壇者は司会の船本由佳氏、神戸・髙村昌幸氏(神戸元町商店街まちなみ委員会)、長崎・梅元健治氏(長崎居留地歴史まちづくり協議会事務局長 / 一般社団法人ナガサキベイデザインセンター代表理事)、新潟・杉山節子氏(歴史都市新潟研究会会長)、函館・仙石智義氏(函館景観まちづくり協議会事務局長 / 函館市地域交流まちづくりセンター長)、横浜・川井喜和氏(協同組合伊勢佐木町商店街 / NPO法人 HamaBridge 濱橋会 副理事長)。
ディスカッションでは、「歴史文化へのタッチポイントを増やすための工夫や悩み」や「歴史文化を次世代に引き継ぐ取組・工夫」などについて話し合われた。
神戸・髙村昌幸氏(神戸元町商店街まちなみ委員会)「誰に対してのタッチポイントを作れば良いのかが悩み。」「地元の大学と連携し、SNSで元町商店街の魅力を発信している。」
長崎・梅元健治氏(長崎居留地歴史まちづくり協議会事務局長 / 一般社団法人ナガサキベイデザインセンター代表理事)「これまで街中を博覧会会場に見立てる『長崎さるく』を開催してきた。」「最近では小学校の地域学習の中で小学生がガイドをするということに取り組んでいる。」「スポーツの力、音楽の力、映像の力は大きい。次のコンテンツを見ていると、いつの間にか歴史文化に触れていたというのが良いのではないか。」
新潟・杉山節子氏(歴史都市新潟研究会会長)「新潟市の歴史資産の多くは博物館的に保存されており、様々な人が見ることができる。」「自分が小学校時代から、地元の歴史資産について教育されているのが日常であり新潟市の特徴。今後もそれが継承され発展することを期待する。」
函館・仙石智義氏(函館景観まちづくり協議会事務局長 / 函館市地域交流まちづくりセンター長)「アニメなどのサブカルチャーやスポーツなどの連携が必要。デザインの良さも必要。」「古写真と現代写真との比較だと子どもたちも興味を持つ。身近に感じてもらうことが重要。」
横浜・川井喜和氏(協同組合伊勢佐木町商店街 / NPO法人 HamaBridge 濱橋会 副理事長)「横浜では歴史文化が運河沿いに点在している。今後も水上交通などを通じて広めていきたい」「教室の中だけでなく、船の上から学ぶの良いのでは。」「街同士のつながり。地元のかっこいい先輩たちから引き継いだものの積み重ねが歴史文化になっていく。」
最後に船本氏から「何もかも『知る』ことから始まる。開港5都市がそのような場となることを期待」と感想の共有がありトークセッションを終えた。
全体を通してテーマの共有ができ、3日間の参加者の活発な議論と知見の共有に大いに期待が広がる内容であった。
(提供)開港5都市景観まちづくり会議横浜大会実行委員会
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