2019年11 月23日(土曜日)、馬場花木園の古民家ゾーンの拡張オープンにあわせ、横浜市鶴見区にある馬場花木園において市民20名が招かれ「旧藤本家住宅主屋及び東屋」のオープンニングイベントが開かれた。主催は当公園の指定管理者である公益社団法人横浜市緑の協会。
10時から主屋のデイとザシキを会場として、公益財団法人横浜市緑の協会山崎常務理事、横浜市環境創造局公園緑地整備課鈴木課長の挨拶に始まり、株式会社建文取締役企画部長の田中昭之氏に解説、公益社団法人横浜歴史資産調査会常務理事の米山淳一氏による古民家講座が行われた。
田中氏は当建物の計画・設計から施工管理まで担当しており、解説では、旧藤本家住宅の歴史や公開に至るまでの工事において用いた曳家などの技法について丁寧な説明があった。
米山氏からは古民家講座「各地に息づく茅葺き民家」と題し、日本全国の茅葺き民家保存の事例を挙げながら、先進事例や茅葺を取り巻く課題が話された。
旧藤本家主屋は、江戸時代末期から明治初期に港北区篠原に建築されたものを大正2年(1913年)澤野富太郎により当地へ移築・上棟された。その後、昭和17年(1942)年に藤本家が購入し、平成23年(2011)まで住み継がれて来た。
藤本家が所有していた昭和56年(1981年)には谷戸田を藤本農園(牡丹・菖蒲園)として一般に開放していたが、平成11(1999)年、横浜市が整備し、馬場花木園として開園している。
主屋は平成4年(1992年)に横浜市歴史的建造物に認定され、平成23年(2011年)に横浜市が残りの敷地とあわせて取得、平成28年(2016年)、「旧藤本家住宅主屋及び東屋」特定景観形成歴史的建造物に指定されている。
建物の外観は、茅葺き屋根と戸袋に塗られた弁柄が特徴となっており、今回の改修を経て、よりそれが顕在化するとともに、前面の花木園の後背の樹林地と調和し、往時の横浜郊外部の姿を彷彿とさせる景観を作り出している。
この茅葺きの姿を再現するために、建築基準法の適用除外、放水銃などの防火施設の整備、上家・曳家などの伝統技法も駆使した耐震改修など、あらゆる手段が取られていることにも着目したい。また、主屋の北側に詰所と便所を併設し、より使い勝手の良い施設とできたことも評価されるべきところであろう。
建物内部に目を移すと、よく一般的に田の字型と呼ばれる整形四間取りで土間と床の境に大黒柱が立っている。土間や囲炉裏などがあり、かつての伝統的な農家の倉石を彷彿とさせる。
内部の展示には、襖建具を模した引違い戸状のパネルがあり、周辺の歴史や建物について紹介されている。また、往時の農具なども展示されており、一つ一つの用途に考えを巡らせるのも楽しい。
オープンニングとなった今日は、生憎の雨であったが、馬場花木園は無料で公開されており、晴れている日にお散歩を兼ねて、近隣の旧澤野家長屋門(横浜市認定歴史的建造物)とあわせて是非一度見学されたい。
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