※記事は取材当時の内容です。
葉山町は明治以降、皇室をはじめ、華族や文化人たちが別荘を構える一大別荘地となってきた。明治27(1894)年に造営され、現在まで使用されている葉山御用邸(現在の本邸は昭和56(1981)年)、旧東伏見宮別邸(大正3年(1914)年 現イエズス孝女会修道院旧館 国登録有形文化財)、旧加地邸(昭和3(1928)年 国登録有形文化財)など町を歩けば、今でも随所で往時の風情を感じられる。
今回紹介する「engawa cafe & space」は、別荘地の風情がよく残る葉山町一色地区、神奈川県立近代美術館葉山館から程近い場所に位置している。建物は、かつて皇室の侍医頭を務めた旧塚原伊勢松氏の別邸として、宮内庁により建てられたそうだ。古地図を見ると近くにはかつて葉山御用邸及び付属邸(現葉山御用邸及び葉山しおさい公園)、高松宮別邸(現神奈川県立近代美術館葉山館)、北白川宮別邸があったようなので、皇室の別荘に近い同地が選ばれたのではないだろうか。
建物は入口から奥に長いシンプルな構成だが、羽根や霜が降りたように見える結霜ガラス(フェザーガラス)が嵌め込まれた建具、細かい組子細工、奥座敷の黒い砂壁など随所に拘った造作が感じられる。席につくと、縁側から心地良い風が吹き込み、奥座敷の窓から抜けていく。
今回は夏季限定メニューの湘南豚冷やしうどん御膳をいただいた。三浦野菜の蒸篭蒸しに始まり、たまごやラー油、塩、酢橘等トッピングを少しずつ味を変えながら食べ進める。うどんは当日の打ちたてを提供しているそうで、しっかりとコシがあり、美味しくいただいた。営業日やメニューは変更になることもあるので、最新の情報をホームページにて確認した上での来店をオススメしたい。
同店で食事の後は、葉山しおさい公園や神奈川県立近代美術館葉山館、一色海岸等を合わせて散策しながら、葉山の別荘文化を体験してみてはいかがだろうか。
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