逗子の松汀園はKKR(国家公務員共済組合連合会)の保養所なので基本的には宿泊施設であるが、多様な日帰り利用のプランがホームページで紹介されていたので立ち寄ってみることにした。
逗子の海岸沿い国道134号線から新宿方面に向かう細い道の先に松汀園の門があり、松の木立に囲まれた小径を進むと玄関がある。玄関を入ると右手がフロントとなっており、スタッフが出迎えてくれた。そこで、個室でランチをいただける「松の庭・縁側カフェめし」プランを利用することを告げ、部屋に案内された。
松汀園には大正期に建てられた平屋の「大正館」と鉄筋コンクリート2階建ての「昭和館」があるが、今回案内されたのは大正館の「蝦夷松」という部屋を襖で二つに分けて縁側まで貸切にしてあったところであった。
手前の部屋には4人がけのテーブルセットに椅子が庭に向けて2つだけ置かれていて、縁側にも、年季の入ったローテーブルとローチェアが並んでいる。
テーブルに置かれているメニューには「がばっと海鮮丼」「海老天どん」「とんがりシラスどん」とあり、どれも魅力的であったが、地元素材に期待して「とんがりシラスどん」を選び、ドリンクとデザートがついてくるセットにして注文した。
縁側の先には、日差しに映える青々とした芝生が広がっており、ガラス戸を開けると気持ちの良い涼しい風が吹き込んできた。
外を眺めながらゆったりしていると、注文したシラス丼が運ばれてきた。「とんがりシラスどん」の名に相応しく、丼の上にシラスがこんもりと立ち上がっている。しらす丼には、味噌汁と漬物のほか、暖かい出汁が添えられており、途中で味を変えて楽しむことができるようになっていた。
シラスとワカメの下の層にある海苔とご飯を混ぜながら少しずつ食べ進めた。4分の3ほど食べ進めたところで、出汁を加えてひつまぶしのように食べてみた。なるほど先ほどの丼の味とは違う食感で、出汁の香りが広がった。
食事が終わる頃を見計らって、コーヒーとデザートが運ばれてきた。デザートは杏子ジャムがのせらたほうじ茶ゼリー。縁側のローテーブルに運び、外の風を直に感じながらゆっくりとした時間を楽しんだ。
松汀園の大正館は、大正12(1923)年6月、協和銀行の創設者である銀行家の牧野元次郎の別邸として建てられた。同年起こった関東大震災により周囲の建物は倒壊したものも多かったが、この建物はほぼ原形をとどめ、現在は4つの客室と応接兼ロビーとして使われており、広々とした庭園に沿って長い回廊がしつらえられている。
コーヒーとデザートをいただき、会計を済ませたあと、庭に出て芝生の匂いを楽しんだ。
湘南の豊かな別荘文化を現在に伝える松汀園。海岸までの歩いて数分であり、国家公務員用の保養施設であるが一般の方も宿泊もできる。逗子でのまち歩きの拠点として、一度、利用してみていただきたい。
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